過剰診断、前立腺がんでも
阿部 久美のブログ

2019年10月31日 に引き続き日経新聞夕刊に東京大学病院准教授中川恵一氏が毎週書いているコラムを全文掲載します。
今回は、とても心強くなる内容です。
がん検診の目的はがんによる死亡を減らすことであって、早期発見そのものではありません。韓国や福島での甲状腺検診は見つけなくてもよい無実の甲状腺がんの発見を増やすだけで、プラスよりもマイナスの方が上回ると思います。
高齢男性に多い前立腺がんでも、この「過剰診断」が問題となります。8月の国立がんセンター研究所の発表によると、がん全体の5年生存率は66.1%でした。臓器別では前立腺がんが98.6%で最も高く、すい臓がんは9.6%と最低でした。前立腺がんについては、最も早期のステージ1から手術が難しいステージ3まで、いずれの5年生存率も100%でした。10年生存率も全体で95.7%に達します。不治の病どころか殆ど「不死の病」と言えるでしょう。わずかな例外を除き,前立腺がんで命を落とすことは稀ですから、早期発見が無駄になることが多くなります。実際、腫瘍マーカー「PSA」による前立腺がんの検診による利益と不利益は以下のように見積もられています。受診者1000人中、検診により前立腺がんによる死亡を回避できるのは1人。一方、受診者1000人中30〜40人に治療により勃起障害や排尿障害が発生。1人に肺や下肢に重篤な血栓が発生。1000人中0.3人が治療の合併症により死亡。過剰な治療を避けるため、早期で、タチの悪くない前立腺がんに対しては、「監視療法」が国際的な「標準治療」として確立しています。「療法」という名前がついていますが、実際には治療は実施せず、慎重に経過を観察します。3〜6か月ごとの直腸からの触診とPSA検査、および1〜3年毎の前立腺生検を行い、病状悪化の兆しが無ければ、監視を続けます。最近では生検を避けて、磁気共鳴画像装置(MRI)検査で代用することもあります。欧米での大規模な研究でも、監視療法を採用した場合の10年生存率は、手術や放射線療法と差がないことがわかっています。ただし、前立腺がんによる死亡がゼロではないのもたしかです。本当に治療が必要な患者を選別できる簡便な検査法が見つかることを期待しています。
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