外傷後ストレス障害(PTSD)により障害基礎年金の支給を求める再審査請求を棄却

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外傷後ストレス障害(PTSD)により障害基礎年金の支給を求める再審査請求を棄却

阿部 久美のブログ

外傷後ストレス障害(PTSD)は日本の障害年金制度が依拠する国際疾病分類ICD-10において神経症(F4)に区分されています。

そして障害認定基準においては「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、その対象とならないとされているが、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱うとされ、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。」とされています。

そして上記の「認定の対象とならない」とはその傷病による障害については、それがどのようなものであっても、その状態をもって、国年令別表に定める程度の障害の状態に当たるものとしないとの趣旨であると解されています。

とはいえ、どういう状態が「精神病の状態を示してるもの」に該当するかは具体的にされておらず、また、そもそも何故、神経症を「認定の対象一次とならない」としているかについても合理的で納得性のある理由は示されていません。

しかしながら、一次裁定はもとより社会保険審査官の決定においても社会保険審査会の裁定においても、神経症を「認定の対象とならない」として切って捨てる決定が相次いています。

社会保険審査会の決定を一つ紹介します。

この請求人は遡及請求を行い、障害認定日時点でも事後重症請求でも不支給とされ、審査請求を経て再審査請求を行っています。

障害認定日時点の状態は抑うつ状態(憂鬱気分、希死念慮)、精神運動興奮状態及び昏迷の状態(自傷)が認められ、その程度・具体的な症状として休職しており、復職はしたものの仕事に対する不安があり、しなくてはならないという思いが強く、不眠になっていたそうです。

裁定請求日時点の状態は、抑うつ状態(思考・運動制止、刺激性、興奮,憂鬱気分、希死念慮)、精神運動興奮状態及び昏迷の状態(自傷)が認められ、その程度・具体的な症状として、両耳が聞こえず、耳鳴りがあり、大学病院で遅発性内リンパ水腫といわれ、仕事を休むようになり、心身ともに疲れ希死念慮が強くなっていたとされています。

社会保険審査会の裁定は障害認定日並びに裁定請求時点ともに「F43.1  外傷後ストレス障害」に分類され神経症の範疇の属するものであり、その臨床症状から判断して、当該疾病による病態は、精神病の病態を示していないと認めるのが相当であるから認定の対象とならない。」というものです。

尚、審査請求時に、各診断書の傷病名欄に「追記、うつ病(F32.1)」と追記し医師の押印を得て追加提出していますが一顧だにされませんでした。

この一連の取り扱いは、著しく公平を欠く不平等なものだと考えますが、根本的に糺すためには行政訴訟を積み重ねていくしかないのだろうと思います。

実践的な対処としては、裁定請求の診断書を作成してもらう段階で、医師と病名についてよく話し合い、神経症と同時に気分障害などが併存していないかをよく確かめ、あれば傷病名欄に併記してもらう事が大変重要です。

後から訂正や追記しても、上述の通り認めてはもらえません。

 

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