コロナウィルスへの恐怖に基づくPTSDは障害年金の対象になるか?
阿部 久美のブログ

今日の日経新聞「春秋」欄に興味深い記事が載っていました。
「米ハーバード大学の調査研究によると、新型コロナ「第1波」の最中、特異な悪夢を見る人が増えた。ある女性は吸血鬼の牙を持つ巨大なバッタに遭遇した。他にもゴキブリの大群やハチなどの虫に襲われる、見えない怪物やゾンビに追いかけられるといったパターンも特徴的だという。
おぞましい夢想の数々は戦争やテロを経験した後に発症する、いわば心的外傷後ストレス障害(PTSD)のようだ。ウィルスの恐怖は、他の災害と違って目に見えずつかみどころがない。故に人々の心に重くのしかかる、と研究を率いたディアドラ・バレット博士は、近著『パンデミック・ドリームズ(原題)』に記す。」
新型コロナウィルスがPTSDに悩む人々をも増やしているとは驚きです。
ところで、PTSD(心的外傷後ストレス障害)は障害年金の認定対象になるでしょうか。
残念ながら、対象になりません。というのは日本の年金制度が依拠する国際疾病分類であるICD-10においてPTSDは神経症に分類されており神経症について障害認定基準・要領では「神経症については重症なものであっても、その状態をもって、障害等級に該当する程度以上の障害の状態にあたるものとしない。」とされているからです。
原則として認定対象とならないとは、その傷病による障害については、それがどのようなものであっても、その状態をもって、障害等級に該当する程度以上の障害の状態にあたるものとはしないとの趣旨です。
PTSD以外にも神経症と分類されている傷病は以下の通りです。
F40恐怖性不安障害…広場恐怖、社会恐怖他
F41その他の不安障害…恐慌性〈パニック〉障害、混合性不安抑うつ障害他
F42強迫性障害〈強迫神経症〉…主として強迫思考又は反復思考、主として脅迫行為〈強迫儀式〉他
F43重度ストレスへの反応及び適応障害…外傷後ストレス障害、適応障害他
F44解離性[転換性]障害…解離性健忘、解離性運動障害他
F45身体表現性障害…身体表現性自律神経機能不全、心気障害他
F48その他の神経症性障害…神経衰弱、離人・現実感喪失症候群他
実に数多くの疾病が障害年金の認定対象からは外されています。
尚、例外として、その臨床症状から判断して「精神病の病態を示しているもの」については、認定の対象とされています。
ただし、「精神病の病態を示しているもの」と診断書に記載されたとしても、直ちに認定の対象となる可能性は低く、審査請求、再審査請求で「精神病の病態を示している」ことを主張しなければならないものと考えます。
強迫性障害については再審査請求で支給となった裁決もあります。
また、最近の調査では、強迫性障害では67%、パニック障害では50〜65%、PTSDでは48%の割合でうつ病が併存していることや適応障害の場合には、診断後5年後には40%の人がうつ病等の診断名に変更されていること、不安症のうち74.9%に双極性障害が、56%にうつ病が、38.3%に統合失調症が並存していることが明らかになってきました。
うつ病など、認定対象となる疾病が併存している場合には、当然、認定対象として審査されます。
また、当初はPTSDとの診断であったがその後、うつ病と診断が変更された場合には、初診日はうつ病と診断変更された日ではなくPTSDと診断された日になりますのでご注意ください。
さらに、神経症と名の付く疾病の中で抑うつ神経症は、神経症ではなく気分障害(F34)に区分されており、単独でも障害年金認定対象となっています。
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