徳島市在住、慢性肝炎の男性からのお問い合わせ
阿部 久美のブログ

今日は徳島市にお住まいで、慢性肝炎の診断を受けておられる男性からのお問い合わせをいただきました。
「数年前に慢性肝炎との診断を受けた時は、さほど自覚症状もなく深刻に考えていませんでした。しかし、今ではとにかくしんどく、食欲もなく、一日中ぐったりしています。むくみもひどいです。仕事に行くことができない日が増えて、今は休職中で傷病手当金を受けています。慢性肝炎では障害年金は出ないと聞いたのですが、今後も障害年金は受給できないのでしょうか?」というご質問です。
平成26年6月の改正前まで慢性肝炎は「原則として認定の対象としない」としてきましたが、認定基準に掲げる障害の状態に相当するものは認定の対象にする」に変更されました。
慢性肝炎は、インターフェロン治療で99%症状がコントロールできるため、日常生活への支障は等級に該当しないという解釈でしたが、治療の為に労働に支障のある場合もあります。
また今回のご相談者様が恐らくそうではないかと拝察するのですが、傷病名が慢性肝炎であっても検査数値を見ると「肝硬変」であったりボーダーラインであったりすることが見受けられるそうです。
その為に認定基準に明確に該当すれば等級を認定することになりました。
ご質問者様の場合、まず、慢性肝炎の初診日要件と保険料納付要件の確認が必要で、これが請求のスタートとなります。
そして障害認定日が経過していれば請求の手続きが可能となり、現在の障害の状態が認定基準に該当すると判断された場合、支給されます。
「初診日要件」とは
初診日は、国民年金と厚生年金のどちらに加入していたか、その加入していた制度によって、もらえる年金の種類が決まります。
- 初診日が厚生年金被保険者期間中にある場合は、障害厚生年金
- 初診日が国民年金被保険者期間中にある場合は、障害基礎年金
- 初診日が20歳前または60歳以上65歳未満(国内に住んでいる方のみ)の年金未加入期間にある場合は、障害基礎年金
※初診日とは…障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいいます。ただし、知的障害の場合は、出生日が初診日となります。
「保険料納付要件」とは
初診日の前日において以下の1または2を満たしている必要があります。
- 初診日の属する月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
- 初診日において65歳未満であり、初診日の属する月の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
※20歳前に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われません。
「障害認定日とは」
障害の程度の認定を行うべき日をいい、原則として、
- 初診日から起算して1年6月を経過した日
- 傷病が治った日(その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む)
のいずれか早い日となります。
「肝疾患の認定について」
肝疾患の場合、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、
具体的な日常生活状況等により、総合的に認定されます。
慢性肝炎は、原則として認定の対象としないが、以下に掲げる障害の状態(認定基準)に相当するも のは認定の対象とする。
認定基準は以下の通りです。
「肝疾患の認定基準」
【1級】
1,2を満たすもの
- 以下の検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの又は高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上示すもの
- 一身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの
【2級】
1,2を満たすもの
- 以下の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示すもの
- 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの、または、歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
【3級】
1,2を満たすもの
- 以下の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を2つ以上示すもの
- 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの、または軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
○肝疾患での重症度判定の検査項目及び臨床所見並びに異常値の一部を示すと次のとおりである。
検査項目/臨床所見 |
基準値 |
中等度の異常 |
高度異常 |
血清総ビリルビン (mg/dl) |
0.3〜1.2 |
2.0 以上 3.0 以下 |
3.0 超 |
血清アルブミン (g/d l) (BCG 法) |
4.2〜5.1 |
3.0 以上 3.5 以下 |
3.0 未満 |
血小板数 (万/μ l) |
13〜35 |
5 以上 10 未満 |
5 未満 |
プロトロンビン 時間(PT)(%) |
70 超〜130 |
40 以上 70 以下 |
40 未満 |
腹 水 |
― |
腹水あり |
難治性腹水あり |
脳 症 |
― |
【精神症状】 睡眠−覚醒リズムに逆転。 多幸気分ときに抑うつ状態。 だらしなく、気にとめない態度。 【参考事項】 あとで振り返ってみて判定できる。 |
【精神症状】 指南力(時、場所)障害、 物をとり違える(confusion) 異常行動 (例:お金をまく、 化粧品をゴミ箱に捨てるなど) ときに傾眠状態(普通のよびかけで開眼し 会話が出来る) 無礼な言動があったりするが、他人の指示には従う態度を見せる。 【参考事項】 興奮状態がない。 尿便失禁がない。 羽ばたき振戦あり。 |
なお、障害の程度の判定に当たっては、前記の検査成績及び臨床所見によるほか、他覚所見、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。
ご質問内容からは、検査成績や日常生活状況等が分かりかねますが「食欲もなく、一日中ぐったりしており、むくみもひどく仕事に行くことができない日が増えて今は休職中」とのことです。
上記の認定基準を参考にしていただき、申請を検討されてはいかがでしょうか、とお話ししました。
なお、傷病手当金の支給を受けている間に障害厚生年金の支給が決定した場合は、下記の併給調整を受けることになりますので、ご注意ください。
障害厚生年金と傷病手当金の併給調整について
同一傷病について、
障害厚生年金を受給している期間と傷病手当金を受給している期間が重なっている場合、
傷病手当金について減額調整されます。
- 傷病手当金>障害厚生年金の場合、傷病手当金は差額分が支給されます。
- 傷病手当金<障害厚生年金の場合、傷病手当金は支給されません。
※別傷病の場合は調整されません。また障害基礎年金のみの場合も調整は行われません。
お気軽にお問合せください。
障害年金は国の施しではありません。国民の権利です。
煩雑な手続きを代行し、権利を行使するお手伝いをしっかりさせていただきます。
どんなご相談でも承ります。お気軽にお問合せください。
お電話でも承ります
090-5146-8064
平日9時~18時